2018年にオルレアン市にある日仏交流協会の代表・川西さんに連絡をしてから、急展開となったル レクチエ「フランスへ里帰り」事業。ピエールエルメ氏とのコラボレーション(創作意欲を刺激する”カメレオンフルーツ”)も、この里帰り事業に共感をしてくださったことがきっかけとなりました。川西さんと、オルレアン市役所国際課、地元美術大学のESAD Orléansの協力を得て、2019年5月にオルレアン市が管理するグロロ邸にて、ル レクチエをテーマにしたアート展示を行い、国内外のお客様にル レクチエについてのレクチャーを行いました。新潟の農家がル レクチエをどれだけ大切に栽培しているかの象徴でもある袋掛けを「物を包む」という展示に照らし合わせて、作物でさえ「大切に育む」という文化を理解してもらいました。そして「あなたの大切にしているものは何ですか?」という質問を鑑賞者に投げかけ、フランスの方々に新潟の文化の似ている点や異なる点を感じていただきました。ちなみにフランスの国民性からの多くの答えは「愛・友情」でした。日本や違う国で行う結果はきっと違うものになるかもしれません。
さらに地元小学生たちを対象としたミニ凧づくりワークショップ、地元新聞社からの取材、地元ラジオ番組への出演なども経て、市民との交流も重ねていきました。地元ラジオ番組を持つほどの著名栽培家アンボー氏によると、ル レクチエはオルレアンのすぐ隣の小さな村で始まり、当時の栽培家レクチエ氏へのオマージュとして名前をつけたのが、オルレアン市の歴代の市長トロンソン氏であると教えてくださいました。また16世紀のフランス革命まで梨は高価な食べ物として、貴族のみが食べることを許されていた、など秘話を教えていただきました。現在もなお、オルレアン市や市民との交流は続き、コロナ禍で頓挫してしまった農業青年同士の交流を実現させることを、待ち望んでいます。
文:本間智美