ル レクチエを「五感の総合芸術」と紹介するのは、明治11年創業の老舗和菓子店・丸屋本店(新潟市)の本間彊会長。初めてル レクチエの加工に成功した人物で、現在丸屋ではゼリーや饅頭、羊羹などル レクチエを使った多彩な和洋菓子を提供しています。
修行先の京都から新潟に戻り「新潟らしいお菓子を作りたい」と模索していた20代後半、偶然目にしたル レクチエの新聞記事が、本間会長の人生を大きく動かしました。「当時全然知名度がない果物でしたが、気になって読み進めるうちに、幼少期、まだ流通してなかったル レクチエを祖父が食べさせてくれて、未体験のおいしさに感動したことを思い出したんです。この再会は運命だと感じました」。
当初、生食が当たり前だったル レクチエをお菓子にしたいという本間会長の提案は生産者の大反対を受けます。「加工すれば一年中食べられる」と訴え続けたことで、理解を得ることには成功しましたが、前例がないため独特の舌触りと香りを生かす商品の開発には3年もの歳月がかかりました。ル レクチエ自体のPRにも力を入れており、「惚れてしまったので啓蒙はライフワークなんです」と笑う本間会長。尽力の甲斐あって現在ル レクチエは新潟を代表する果物として親しまれています。「農家の方は一緒に作る兄弟。だから “Farmer’s Sweets”と謳っているんです」そう嬉しそうに話す表情が、何よりもル レクチエの魅力を物語っていました。
文:丸山智子